小児B型肝炎の診療指針から

小児B型肝炎の診療指針

<血清診断>
B型肝炎ウイルス(HBV)感染の判定
 定型的な感染:HBs抗原陽性・HBs抗体陰性・HBc抗体陽性
 定型的な感染既往:HBs抗原陰性・HBs抗体陽性・HBc抗体陽性

 高感度HBVDNAは、HBs抗原と必ずしも一致しない

HBV感染の病態把握
 HBs抗原陽性のとき、生化学一般検査他を行う
   HBVDNA量、HBe抗原、HBe抗体、HBc抗体
   IgM型HBc抗体(新5類感染症として診断時に必要)

<感染経路>
1)母子感染
感染経路として、最も重要。
出生後早期の予防処置により、ほとんどの母子感染を予防することが可能。
胎内感染例と一部の産道感染例は予防することが不可能。

2)家族内感染
HBVは性行為により感染するため、夫婦間感染も重要な感染経路。
HBe抗原陽性者では、高率に夫婦間感染がみられ、大半の配偶者は結婚後5年以内にHBs抗体を獲得する。

父親がHBVキャリアの場合には、父子感染することがある。
その他の家族がHBVキャリアの場合も含めて、少量の血液を介して家族内感染する可能性がある。
家族内にキャリアがいる場合は、HBワクチンによる予防を考慮する必要がある。

3)輸血による感染
輸血によるHBV感染はきわめてまれになっているが、まだ撲滅されていない。
34-45万本の輸血に対して1件の受血者に感染すると推定されている。

4)性行為による感染(STD)
STDによる感染と推測される症例が増加している。これらの大部分は不顕性感染で、本人が気づかないうちにHBs抗体が陽転する例が多い。
時に、B型急性肝炎を発症する例があり、まれではあるが、劇症化する症例もある。
STD感染例で、キャリア(慢性)化する症例が増加している。

5)医療機関内感染
機器を介しての感染はないと考えられるが、HBV感染者の血液に汚染された針の針刺しによる感染は起こりうるため、HBs抗体陰性の医療従事者はHBワクチンを接種すべきである。

<自然経過と予後>
新生児・乳児期のB型急性肝炎は無症状のことが多い。
HBe抗体陽性の母親から生まれた児はほとんどHBVに感染することはない。
生後2-3ヶ月に約10%に一過性感染が見られるが、母子感染防止対策によりこの一過性感染は激減した。

B型慢性肝炎は、肝機能異常が存在するときはもちろん、SC後に肝機能が改善したあとに再度肝機能が異常となる場合がある。
また、肝機能異常の有無にかかわらず肝癌を発症する例がある。
HBVキャリアは、生涯にわたって定期的に経過を観察する必要がある。特に肝癌発症には注意が必要で、定期的なαフェトプロテイン、PIVKA-2、超音波検査を行うべきである。

<感染防止>
1)母子感染防止
HBs抗原陽性のすべての妊婦からの出生児が母子感染予防措置の対象となる。
この予防措置については、健康保険診療で行うことができる。

出生した児に対して、HBIGを2回とHBワクチンを3回投与する。
児の血中の獲得HBs抗体価が十分に得られなかったり、検出されなくなった場合には、適宜 HBIG HBワクチンを追加投与する。
なお、母親のHBe抗原が陰性の場合は、2ヶ月時のHBIG投与は省略可能である。

HBs抗原検査は、生後1ヶ月時と6ヶ月時に行う。
臍帯血は偽陽性となることがあるので検査しない。
3歳以下の児にHBVが感染するとキャリア化しやすいことが知られており、少なくとも3歳までは十分な抗体価を維持するべきである。
生後6ヶ月目の検査でHBs抗体が陽性であることを確認した場合でも、生後1年目、2年目、3年目まではHBs抗体の検査を行い、HBs抗体が陰性化していた場合にはHBワクチンを追加接種して、HBs抗体が陽性である状態を維持しておくことが必要である。

2)家庭内感染防止
HBVキャリアの他人が結婚を予定し、相手がHBs抗体陰性であることがわかった場合には、家庭内感染の可能性があるためHBワクチンを接種しておくことが望ましいが、現状では保険外診療となる。

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